本郷百貨店
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インドカレーの専門店「ダージリン」店主 シャラン・プラディープさん

 彩色が施された大きな木彫りの人形が、「ようこそ」と言わんばかりに入口で待ち構える。東大赤門前で2001年から続く「ダージリン」は、インドカレーの専門店。店主のシャラン・プルディブさんは軽快な語り口で、インドとカレーの奥深さを教えてくれる。

明日のことはわからないからこそ楽しい

 「昔はよく、アメリカの俳優のニコラス・ケイジに似ているって騒がれました」。ガハハと笑いながら、そう話すシャランさん。店名は故郷インドのビハール州にある地名から付けた。日本にやって来た経緯を聞くと、「1秒の答えと長い答え、どっちがほしい?」と逆にたずねられた。思いがけない選択肢に戸惑いながら長い方をお願いすると、「ではカルマってわかります?」と急に真面目な顔に。「宗教は信じてもいいし、信じなくてもいいもの。つまり自分の信じる気持ちそのもの。カルマは神様が用意してくれた私のためのプランで、私たちの信じるヒンドゥー教では大事に考えられているもの。私はそれに従って日本に来ました。これが哲学的な長い方の答え」。じっと続きを待つ。「短い方は、兄が日本でお店をやっていて、呼ばれたから来たの。私はノー・プラン」。そしてまたガハハと破顔した。
 「私はいつも楽しいですから。いろんなプランが決まっていると楽しくないけど、明日のこともわからないから楽しい」。話の途中、外を通った近所の人に「あ、こんにちは」と会釈したかと思えば、今度は携帯電話が鳴り出してキッチンへ。戻ってくると、どうぞとチャイを出してくれた。シャランさんは実に忙しく、細やかだ。

3人のインド人シェフがつくるカレー

 本郷の街のよさを問えば、即座に「東大!」と元気よく答えてくれた。「東大の構内は空気がよくて散歩にもいい。店に来てくれる先生たちもおもしろい話をたくさんしてくれる。赤門にちなんだ真っ赤な辛いカレーだってあります」。厨房でカレーをつくるシェフは現在3人。みんな北インド出身で、シェフ歴25年のベテランもいる。ランチの日替わりメニューにある、フェヌグリークという香辛料を使ったカレーが、シャランさんは「体にもいいし一番好き」だという。いずれのメニューも辛さはそれぞれ調整可能だが、バターチキンなどは「マイルドの方がいい」そうで、甘口が向くものや、辛口にしても美味しいものなど、カレーの具材や種類によって異なるのだと話してくれた。
 取材を終えると、「人生は楽しいです。何かあってもなんとかなるよ」と独特なあいさつで送り出してくれた。夏はとっくに終わっているのに半袖姿のシャランさん。もしかするとここは年中、ぽかぽかしているのかもしれない。(文:井上瑤子 写真:清水美由紀)

ダージリン

東京都文京区本郷5-26-5
電話:03-5684-4448

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