本郷百貨店
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オリジナルの彫金作品を扱う「ジュエリー佐々木」 佐々木正子さん

 春日通りに面したマンションの1階にある「ジュエリー佐々木」。店主で彫金作家の佐々木正子さんは、自身がデザインしたジュエリーを販売しながら、店舗の一角に設けた工房で創作活動を行う。

東大農学部の広大なキャンパスが遊び場だった

 店のオープンは10年前。それまでは他所にアトリエを構え、企業やデパートのカルチャー教室等で彫金教室を開いていた。そのうち「作品を多くの人に見てもらいたい」と自分の店をもつことを考えるようになったものの、場所をなかなか決められなかった。本郷は商売向きではないと思ったが、生まれ育った街で土地柄をよくわかっている。そこで、思い切って開業の地に選んだ。「出戻りみたいなものですね」と笑う。
 子供の頃から絵を描くことやものをつくることが好きだったという。今も絵を描くことは彫金に欠かせない下準備だ。ペンダントでもブローチでも、まずは絵を描き、そこからデザインを起こして彫金の作業に移る。
「私のデザインの原風景は幼い頃に遊んだ東大農学部のキャンパス。今はずいぶん様変わりしたけれど、当時は広大な土地が子供たちの格好の遊び場でした」
「これもその頃の風景を思い出しながら絵を描いたんですよ」と見せてくれた彫金作品は、すすきやコスモス、トンボなどがモチーフ。よく見ると、一つずつ色や形が違う。それぞれ異なる素材、異なる技法を使って手が込んでいる。

客との交流を通じて、街に溶け込む

 多世代の「たまり場」にもなっている店で、佐々木さんはさまざまな客と交流しながら、この街での商売を楽しんでいる。訪れる客の中でも特に本郷周辺に住むお年寄りは、買い物ついでに1時間くらい雑談して帰る。時には日々の悩みを相談されることも。創作は中断されるが、「できるだけお相手したいと思っています」と話す。
 また、子供たちもよく店に来る。ある日、小学生の女の子が商品を長い時間眺めていた。声をかけると、母親にプレゼントを買いたいと言う。選んだ商品は彼女の持ち金では足りないので、もう少し安い商品を提案したけれど、彼女はどうしてもそれがいいと言ってきかない。結局、佐々木さんが折れ、代金を少しまけて包んだ商品を渡すと、帰りがけに彼女は驚くほど丁寧にお辞儀をした。「思わず私も背筋が伸びました。その後も彼女はよくお店に来てくれます。他にも常連の子供たちがいて、どの子もとても礼儀正しい」。そうした子供たちと出会うたびに、この仕事を続けていて、そして、本郷で開業して良かったと思うそうだ。(文:相良好美 写真:清水美由紀)

ジュエリー佐々木

東京都文京区本郷4-5-10-1F
電話:03-5684-6395
定休日:火曜日
営業時間:11時~19時

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