本郷百貨店
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街の歴史を伝えていく葬儀屋「本郷金子商店」 金子茂雄さん

 「本郷金子商店」は明治18年に本郷で創業した葬儀社だ。現社長の金子茂雄さんは、前社長の一人娘と結婚し、23歳の若さで老舗葬儀社を継ぐことになった。それから20年。先代の遺志を継ぎ、地域に根ざした商売を営んでいる。

パソコン業界から老舗葬儀社の跡取りに

 パソコン業界で働いていた金子さんは結婚を機に、奥さまの実家である本郷金子商店に間借りして暮らすようになった。休日には葬儀を手伝ったが、初めのうちは遺体や棺桶を見るだけでぎょっと驚くことが多かったという。
 あるとき、付き合いのある寺の住職から「パソコン業界で君の代わりはいくらでもいるけれど、店を継げるのは君しかいないのだから頑張りなさい」と背中を押され、養子に入って名字を変え、店を継ぐことを決心した。夢にも思わない転身だったが、先代も「あとはお前が好きにやれ」と言い、長年付き合いのある業者も代替わりを応援してくれた。
 「地域や人のつながりには本当に助けられました。この商売は街とともに成長する仕事なんだと改めて実感しましたね」

失いかけた地域のつながりを再構築

 「葬儀屋ってのは街の歴史を伝えていく商売なんだ」。今も胸に強く残っている先代の言葉だ。街を知ることはもちろん、地域とのつながりなくして商売は成り立たない。もともと人と関わることが好きだった金子さんは、消防団に入ったり地元の集まりに積極的に参加したりして、自然に街の歴史を学び、地域に溶け込んでいった。社員と一緒に街を巡り、地域の史跡や名所の写真を撮って記事を書き、ホームページで紹介するといった活動も行う。
 「石川啄木が通っていた理容室が今も営業していたり、樋口一葉終焉の地など、本郷には文豪ゆかりの史跡が多いんです。そういう街の魅力を大勢の人たちに知ってほしいですね」と金子さん。地域との結びつきが強いからこそ、葬儀だけでなく、法事などの仏事について気軽に相談できる場でありたいという。いちょう祭りなど地域の催しでは、テントの調達など、葬儀社の機動力を活かしてイベントを支える。
 「本郷の方が亡くなったときは、酒屋やお寿司屋さんに注文し、お供えものは地元の八百屋から調達、返礼品も地元の和菓子屋やお茶屋さんで、というように本郷ならではのお見送りができたらと思っています」。文京区の返礼品カタログをつくることも計画中。現代社会で失いかけた地域のつながりを再構築するために、日々奮闘している。
 「『最近、先代に似てきたね』って言われるんです。血は繋がっていないのに(笑)。でも、地域の人にそう言われるときが一番うれしいですね」(文:阿部博子 写真:清水美由紀)

本郷金子商店

文京区本郷2-14-9
電話 0120-18-7837
http://www.honkane.com/
営業時間 24時間
年中無休

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