本郷百貨店
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漢方調剤を専門とする「高島堂薬局」 戸田哲司さん

 「高島堂薬局」は明治2(1869)年創業の漢方薬局だ。患者は北海道から沖縄まで、国内に限らず海外にもいる。5代目店主の戸田哲司さんは、一般的な調剤薬局勤務を経て16年前に高島堂薬局に入局。以降は東洋医学の考えに基づく漢方調剤の仕事に従事している。

症状だけでなく全体から病気を診る

 明治初期まで、薬といえば漢方を指した。しかし、西洋医学による医療制度が整うと、東洋医学は百年近く下火になった。その後、昭和40年代後半に一般用漢方製剤承認基準が定められ、漢方が見直されるようになったという歴史がある。
 「東洋医学では『中庸』といって全てに偏りの無いバランスがとれた状態がいいと考えます。人間は皆、この真ん中から少し外れた状態にあり、それが各個人の持つ体質です。その体質の延長上で、何かが強すぎたり弱すぎたりすると病気になる。そこで、余分に強すぎるものを身体から取り去る『瀉』(しゃ)と、足りないものを身体に補う『補』によって、人体のバランスを調えるのが漢方です」
 高島堂薬局では薬剤師による丁寧な問診をもとに漢方薬が処方される。初めに顔や唇の色、手の爪など表面的な部分を見て、それから身体内の状態を聞き、症状を選別する。「樹木にたとえると、葉っぱの1枚ずつに症状があり、それぞれに薬を処方するのが西洋医学。対して東洋医学は、枝葉は全て幹についているので、幹のどこが悪いのかを見極めようとします。葉っぱのほうの症状が強ければ、そこから治療を始める事もありますが、枝葉の症状に囚われず大元の根本を見て病気を治療します」。目に見えている症状を治すことを「標治」、病気の本質を治すことを「本治」といい、治療を分けるのが東洋医学の特徴だ。

常にフラットな状態で患者と向き合う

 ひと昔前は身体の具合が悪ければ、まず薬局に行って薬を買って飲み、それでも治らなければ医者にかかった。国民皆保険制の施行後は、医者の処方箋を持って薬局に行く流れに変わり、ファーストチョイスが薬局でないことが多くなった。「初めに病院に行くと、私どものような薬局にはなかなか入りづらいかもしれませんが、気軽にご相談いただければと思います」と戸田さん。
 「ご自身の病気が治ると、次は知り合いを助けてあげてくださいというように、患者さんが患者さんを連れて来てくださる。病気が治ったときに『ありがとうございます』と言っていただく回数は普通の薬局より多いかもしれません」。そのひと言は嬉しいものではあるが、「患者さんが快方に向かったときも、そうならなかったときも、一喜一憂しないように心がけています」と続ける。心身に波風を立てず、常にフラット、すなわち「中庸」の状態で患者を診ることが大切だからだ。
 「昔の漢方医は『自分の心を鏡にして、自分の身体に病人の症状を写して患者さんを診なさい』と言っていました。だからなるべく淡々と患者さんと向き合おうと思っています」(文:相良好美 写真:清水美由紀)

高島堂薬局

文京区本郷5-24-4
電話:03-3811-1657
営業時間:9:00~19:00
定休日:日曜・祝日、第1・第3土曜
http://www.kanpo-takashimado.com/

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