本郷百貨店
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自転車店「キリン商会」の店主、かつ「眞弓商店会」の会長 瀧野公惟さん

 瀧野公惟さんは「キリン商会」の3代目店主で、半世紀にわたって本郷で自転車整備・販売業を営んできた。「眞弓商店会」の会長でもあり、会長に就任して4年目を迎える

自宅は学生時代からみんなのたまり場

 本郷の移ろいを70年以上見つめてきた瀧野さん。子供の頃に比べて街の景色もずいぶん変わったという。「昔は日本家屋ばかりで、ビルなんてなかったからね。ずらーっと商店が軒を連ねていた。床屋さんなんか3軒もあったし。眞弓商店会ができた頃は店もずいぶん多かったんじゃないかな」。
 父の仕事を間近で見て育った瀧野さんが、突然の病に倒れた父に代わり、家業の自転車店を継いだのは大学生だった20歳のとき。しばらくは学生ながら「キリン商会」の代表を務め、学業と家業を両立した。「だから他所で働いた経験がないんだ。技術はここで、親父がやっているのを見たり、自分で試行錯誤したりして身につけたんだよ」。現在は4代目となる息子と二人で店を切り盛りしている。
 春日通りに面した店舗は、以前は旧弓町にあったが、道路の拡張工事に伴い、旧真砂町に移転した。店舗兼自宅は学生時代から仲間のたまり場だった。「山手線の中に住んでるのがすごいとみんな思うわけよ。今も大学や高校の友人に会うと、大概うちに集まっちゃう。この間も高校時代の野球部の仲間が9人来て、酒を飲んだりしてさ」。

町会と一体となって地域を盛り上げる

 「眞弓商店会」には春日通りをはさんだ旧真砂町と旧弓町の約60店舗が加盟し、その多くは飲食店だ。近年は本郷地区へのチェーン店の進出も増えていることから、商店会への加盟店は減少傾向にあるという。瀧野さんは本業の傍ら、商店会の会長として新しい出店者の勧誘に奔走するほか、文京区の商店会会長の報告会にも欠かさず顔を出す。「会長なんて名ばかりでね」と言いながら、生まれ育った本郷への愛着は人一倍強い。
 眞弓商店会では本郷地区で毎年10月に行われる「いちょう祭り」への出店をはじめ、町会の餅つき大会など地域行事への協賛などを行っている。地域に密着した活動ができるのは、商店会の加盟メンバーの大半が本郷の住民でもあるからだろう。昭和20年代に眞弓商店会が発足して以来、商店会と町会が一体となって地域行事を盛り上げてきた。
 一方、近年は店主の高齢化により閉店を余儀なくされ、そのまま空き家になっている店も目立つようになった。眞弓商店会のメンバーも年齢層が高くなっており、これからの時代を背負う中間層が少ないことが悩みの種だ。「親父の代わりに商店会に顔を出すようになった頃はガキ扱いだったのに、今は上になっちゃって」。そういって笑う瀧野さんのように、高齢ながらも元気で本郷を愛する人たちが商店会を支えている。(文:相良好美 写真:清水美由紀)

キリン商会

東京都文京区本郷4-3-3
電話番号:03-3811-2594
営業時間:平日9時~18時
土曜9時~16時
定休日:日曜祝日

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