本郷百貨店
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和菓子だけでなく洋菓子も売る「本郷 三原堂」 大森葉子さん

 本郷三丁目の交差点に面して店を構える「本郷 三原堂」で、昭和7年の創業時から人気なのが銘菓「大学最中」だ。社長の大森葉子さんは祖父、そして父から経営を引き継ぎ、「多くの人を幸せにするお菓子を」を店のモットーにしている。

客が望んでいることを知ろうとする

 和菓子で知られる三原堂だが、実は洋菓子も販売している。先代の父は若いときにツアーコンダクターをしていて、その頃の食体験をもとに三原堂の中に洋菓子部門の独立店をオープンさせた。三原堂の向かいにあったその店は人材不足により昨年8月に一旦閉めたが、一部の洋菓子は三原堂の店内で販売を続けている。「初めは和菓子屋の中に洋菓子を置くことが気がかりでした」と大森さん。ところが意外にも客の反応はいい。「信号待ちして通りを渡って買いに行くのが実は面倒だった」など、客のニーズを改めて知ることもできた。
 最近は、若い男性客が自分のための和菓子を買いにくる、いわゆる「スイーツ男子」も多い。また、外国人観光客の来店も急増している。以前に比べて日本通の客が増え、和菓子についての質問を受けることも少なくないが、英語ではなかなかうまく答えられない。そのもどかしさから、日本語学校の先生を招いて従業員向けに「おもてなし英会話教室」を開催。すると、「難しいことを言おうとしなくていい。大切なのはお客さまが何を望んでいるのかを聞き取ること。それは相手が外国人であろうと日本人であろうと同じ」と発見があった。

菓子に携わる人自身がまず幸せでなければ

 大森さんは20歳で結婚。出産と子育てを経て、40代でいきなり父の跡を継いで社長に就任した。「本郷は自分の街だと思えたから決心できました」と当時を振り返るが、経験や知識など自分にないものを数えたときには不安でいっぱいになった。試行錯誤を繰り返す中でやがて「経営者というのは、経営者である前に人としてどうあるべきかが最も大事なのだという境地に至ったんです。それで、私は今のままでいいのかと考えたときに初めて、それならちゃんと社長をやろうと思えました」と語る。
 従業員は製造と販売を合わせて現在26名。菓子づくりの経験がない経営者だからこそ、大森さんは従業員を大切にしている。「『つくる』と『売る』が同じ大きさの車輪で回っているようにしたいから、意識の中では境界線がないようにと心がけています。結局は人が気持ちよく過ごせることが大事なので、気持ちよくつくる、気持ちよく売る、この関係性をつくれればいいなと思っています」。
 製造過程では手作業を重視し、包餡も機械に頼らない。この「手でつくる」ことの大切さを後世に伝え、菓子で多くの人を幸せにしたい。大森さんは「お菓子は人生に欠かせないもの。食べて不幸になる人はいない。だから、おいしいお菓子をつくって売るために、そこに携わる人たちがまず幸せでなければ」という思いのもと、従業員が気持ちよく働ける環境づくりにも力を入れている。(文:相良好美 写真:清水美由紀)

本郷 三原堂

東京都文京区本郷3-34-5
電話番号:03-3811-4489
営業時間: 9時~19時 祝日10時~18時
定休日:隔週日曜日

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