本郷百貨店
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「本郷竹下ビル」で「みどり看護婦家政婦紹介所」を営む 竹下由美子さん

 「あ、いらっしゃい。今日はなんでも聞いてちょうだい」。きっぷよく迎えてくれた竹下由美子さんは、東大赤門のすぐ近くに建つ「本郷竹下ビル」のオーナーであり、「みどり看護家政婦紹介所」の経営者でもある。

新婚旅行から帰った日から紹介所を切り盛り

 竹下さんは日本橋で4代続く印刷業を営む商家の生まれ。生粋の江戸っ子だ。4歳で日本舞踊を始め、16歳で名取になった。そして21歳で結婚して以来45年、本郷に暮らしている。「結婚して新婚旅行から帰ってきたその日から、3代目として紹介所を切り盛りしてきたの。商家の生まれだから、嫁が家業を手伝うのは当たり前と思って、ひたすら働きましたね」。
 仕事はそれだけではなかった。嫁いだ先は日本の伝統芸能を担う一家で、姑は琴の箏曲の長寿の脇を務める重鎮、舅も能の謳い手。竹下さんは家事や育児、紹介所の仕事のほか、姑の付き人として身の回りの世話も一手に引き受けた。「いま振り返ると、やり過ぎちゃったかしらって思うけれど、45年間一度も寝込んだことがないし、丈夫なのが取り柄なのよ」と笑う。

安全で安心な本郷の街づくりに取り組む

 本郷には戦前から昭和にかけて、病院で付き添い看護を行う通称「付き添いさん」を派遣する家政婦紹介所が軒を連ねていたという。東大病院だけでなく、御茶ノ水駅周辺にも大きな病院が多いからだ。「みどり看護婦家政婦紹介所」の創業は昭和29(1954)年。竹下さんが嫁いだ昭和40年代には60人余りの女性を雇い、彼女たちが暮らすための寮も自宅の横に完備していた。その後、介護保険制度の改正に伴い、付き添い家政婦の紹介所からヘルパーステーションへと業態を変更。在宅介護や家事のヘルパー、育児代行のベビーシッターの派遣を中心とするようになった。また、自宅をビルに建て替えた24年前からは、テナントビル「本郷竹下ビル」のオーナーとしての仕事も加わった。
 さらに、現在は「本郷五丁目実業会」の副会長も務めている。文化が香る本郷という街の魅力を守るために、実業会で話し合ってLEDを用いた街灯の設置、道沿いの花壇の整備、歩道の清掃などに力を入れ、安全で安心な街づくりに取り組む。
 そんな忙しい日々を送る竹下さんの元気の源は、子育てが一段落した30代後半に再開した日本舞踊だ。「踊っているときが一番、自然体でいられるのよね。空想の世界に浸りきって、役によって男にも女にもなれる。私はきっと一生踊っているんじゃないかしら」。そういってキラキラと瞳を輝かせる表情は、好奇心に満ちた少女のようだった。(文:阿部博子 写真:清水美由紀)

みどり看護婦家政婦紹介所

みどり看護婦家政婦紹介所
文京区本郷5-25-14 本郷竹下ビル2階
電話 03-3811-1516
http://midorishokaijyo.life.coocan.jp
営業時間 9時~16時
定休日 土日

みどり看護婦家政婦紹介所の他の写真